私の好きなアフリカのことわざのひとつに“We have not inheritated　the earth from　our ancestors, we have only borrowed it from our children (今あるこの地球は、私たちが先祖から受け継いだ物ではない、未来の子供たちから借りているものです。)”というのがあります。科学と技術という、人間の文化の中で達成されためざましい成果は、我々の生活を取り囲む物理的環境も見事なまでに創り上げ、今もなお、更なる環境の改善に進んでいるように思います。　その反面、未来に継承する環境のデザインという視点から見たとき、自然との共存、環境との共生を謳いながらも数多くの達成し切れていない課題を抱えているというのも現実です。このアフリカのことわざが示唆する内容は、意味深いと思います。 私が、1972年に建築の道を志して以来30年の年月が経ちました。この間、日本とアメリカ合衆国のいくつかの教育機関と建築設計組織で環境のデザインをテーマに日々の課題に取り組んできました。この30年の蓄積で得た、建築観のひとつが“Architecture in Context” 『文脈の中の建築』ということでした。このContextという英単語がもつ響きが、先ほどのアフリカのことわざを理解するヒントのように感じております。 2002年に私が自身の設計事務所を設立するにあたり迷いなく選んだ事務所名はアルキテクストでした。　建築する場所、周囲が持つ都市的・環境的文脈と建築主の抱く住まいのイメージという文脈を読み取りながら、住空間を創造するプロセスを大切にしていきたいと考えたからです。住む人の目の高さ、尺度、肌触りへのこだわりなどを大切に設計いたします。自分自身も家庭人の一人です。生活者の立場で考え、住まいつづける時間の経過とともに空間の快適さと生活の文脈を感じとれるような住宅のデザインをめざします。 　 株式会社　アルキテクスト1級建築士事務所 代表　露木直巳